「もう歳だから元気がないのは仕方ない……」ED(勃起不全)に対してそういうイメージを持っている人も多いかもしれません。確かにEDは年齢が上がっていくにつれて悩む人も患者数も増えていく病気です。しかし、最近では年齢だけではなく様々な要因がEDを発症するリスクになる事がわかってきました。
特に、糖尿病や高血圧、脂質異常症といった生活習慣病とは強い相関関係があるので、これらの疾病に罹っている人は注意が必要です。
体に何らかの原因がありEDの症状が現れるのは、器質性EDと呼ばれています。その器質性EDの要因の一つが動脈硬化。動脈硬化というのは、「動脈が固くなったり狭くなったりして血液が上手く循環できない状態」を指し、「心筋梗塞」や「脳梗塞」などの生命に関わる病気を引き起こします。
そのイメージから、動脈硬化は心臓や脳などの限られた器官でしか起こらないと思っている人もいるかもしれません。しかし、心臓や脳で起こる動脈硬化が注目されやすいだけで、実際は全身の動脈で起こっている病気なのです。そのため、陰茎で動脈硬化が起こりEDになってしまう可能性だってあります。しかも、陰茎の動脈は心臓の動脈に比べて細いためEDは心筋梗塞の前兆とも言われているほどです。
勃起とは、脳からの指令によって陰茎に流れ込む動脈血が増える事によって引き起こされる現象。そのため、陰茎で動脈硬化が起こっていると、いくら脳が指令を送っても上手く血液を陰茎に送る事ができなくなってしまいます。動脈硬化を防ぐ事が、EDにならないための大きな予防策と言えるでしょう。
動脈は、内膜・中膜・外膜の三層からできています。内膜は内皮細胞に覆われていて、血管の収縮や拡張に深く関係があり、その内膜が傷つくと修復のために白血球や血小板、脂肪細胞が集まってきます。その内皮細胞が何度も修復される事により、しなやかだった内皮細胞がその弾力性を失ってしまうのが動脈硬化のメカニズム。
この動脈硬化の特に大きなリスクだと言われているのが「高血圧」「脂質異常症」「喫煙」。食事や運動に気をつけ、生活習慣を改善する事が動脈硬化にならないために必要なことなのです。
高血圧は動脈硬化を悪化させる大きな原因です。血管を流れる血液の勢いが強くなることで、血管への負荷が大きくなってしまうためです。また、悪玉コレステロールや中性脂肪が血液中で過剰に増えたり、善玉コレステロールが少なくなってしまう脂質異常症も、動脈硬化を進行させてしまいます。
これらの疾患で体全体の血の巡りが悪くなることで陰茎動脈の血流にも影響が出てしまい、EDの原因になってしまうと言われています。
糖尿病も器質性EDの要因の一つです。全身の動脈硬化は糖尿病の典型的な症状です。それに加えて、糖尿病は神経回路に障害を起こすので、脳からの指令が上手く伝わらなくなってしまいます。そのため糖尿病が進行すればするほど、EDの症状も強く現れてくるのです。
患者の体(器質的)には何の問題もなくても、服用している薬の副作用によってEDの症状が現れることがあり、薬剤性EDと呼ばれています。薬剤性EDは、20代などの若い世代でも起こりますが、40代・50代では薬が原因である事が見過ごされやすいので注意が必要です。
特に、生活習慣病である高血圧や脂質異常症の患者に使用される降圧剤や治療薬は薬剤性EDを引き起こしやすいと言われています。薬剤性EDは、薬の種類を変更したり、量を調整することで改善される可能性が高いので、気になるED症状がある場合はぜひ医師に相談しましょう。
肥満やメタボ体型の人は、高血圧や脂質異常症・糖尿病などの生活習慣病に罹っていたり、その予備軍であるケースが多いです。まだ症状がなかったとしても、健康的な体型の人に比べてEDになってしまう可能性が高いとされています。また最近では、肥満はテストステロンという男性ホルモンを低下させるということがわかってきました。健康的な体型を維持する事は、生活習慣病そしてED の予防に最も大切なことなのです。